人気ブログランキング |
ブログトップ

魚心あれば水心

uogokoro.exblog.jp

魚心あれば水心あり:魚と水は互いに相手を欠くことのできない密接な間柄であることに例え、相手が好意を持てばこちらもそれに応ずる用意があることにいう(広辞苑)

ロバート・パーカー大絶賛!

b0010426_21202369.jpg

Estratego Real Tinto
2004 Vino de Mesa
Dominio de Eguren
Spain

ここ最近ずっと「ロバート・パーカー氏絶賛!この価格でこの味わい!」とワインショップで話題になっていたスペインワインを買ってみた。



私が買ったのは近所の酒屋で1300円ちょっとだったけど、同じ商品が秋葉原の駅構内のディスカウント酒屋で1100円で出ていた。ネット価格は1100〜1600円までとだいぶ幅があるが、どれにも「ロバート・パーカー氏絶賛!絶対にケース買いすべきだ!」というコピーが判で押したようについているので、同じ商品だろうと思う。

思う、というのは、このワインはテーブルワインなので、ラベルに生産年が書かれていないからだ。基本的には前年のものなので、今売られているものはVINTAGE 2004年か2005年ということになる。ひょっとすると、Vintage違いで値段に差があるのかもしれないが、確かめてはいない。

それはともかく、私はこういうワイン評価にはあまり興味がない。ちゃんとしたワイン(3000円以上)を頻繁に飲めるような経済力はないし、もし飲めたとしても、高いワインの違いは繊細すぎてわからないと思うからだ。
わからないと思っているのに、わかっていると思われたいとわかったような顔をして対象に深入りするのは危険である。骨董の茶わんと同じ。

でも、自分が買える範囲の値段で「パーカー評価が高い」と書いてあれば、「ちょっと買ってみようかな」という気になるのも事実だ。少なくとも外れではないことが保証されている安全宣言みたいなもので、こういう消費者心理をくすぐるブランドネームは重要だと思う。

さてこの、ロバート・パーカーという人、ワイン業界では世界的に有名な評論家である(らしい)。安いワインから高いワインまで、さまざまなワイン評価に登場し、点数をつけている。100点満点で、80点以上だと広告に名前が使われて「あの、ロバート・パーカー絶賛!」『パーカーポイント90点!」などと書かれている。
「ソムリエ」ではなく「ワイン評論家」なのに注意。「ソムリエ」はあくまでもレストランにいて、料理に合うワインを客の予算の中から選んでくるのが仕事だが、評論家は、数々のワイン雑誌にワインの評価を書くのが仕事。ワイン好きは彼らの評価を読んで、家で飲むワインを決めるが、「ケース買い(12本)」のための情報だから、「コストパフォーマンス情報」が重要になる。
だから、業界への影響力は強い。

この「ワイン業界」がかなり特殊な世界なのだなあとしみじみ感じたのは、英語の勉強がきっかけだ。英語に耳を鳴らすため、英語のラジオ番組を毎日聞くことにしようと、i-Tuneでいくつかのラジオ番組を調べていたら、番組リストにワイン専門チャンネルがあった。
これだけでもちょっと驚くのだが、さらに驚くのは、この「ワインチャンネル」は「Talk and Spoken」という分類に入っているということだ。ここは「コメディ」や「ミステリー」専門チャンネル、宗教や精神世界に関する番組、軍の兵士(Soldier Channel)向けの番組、「株式市場」の動きを延々と流したり、「見えない人のためのラジオ」などある意味「特殊な」ニーズに応える番組のコーナーなのである。ということは、「ワインマニア」という人種が、彼の国(アメリカ合衆国、特にiTune番組リストを作っていると思われるカリフォルニア州)ではそのような「特殊なニーズ」の1つとして、広く社会的認知を受けているらしいことを意味しないか。

で、試しにこの番組を聞いてみたところ、ワイナリー訪問やワイン醸造家インタビュー、記者のワイン評価やワイン好きの座談会のようなものが延々と流れている番組だとわかった。流れにあまりメリハリはなく、興味のない人にとっては全く面白くない。
しかし、興味がある人にとっては聞き逃せない情報満載なんだろうな。ナパ・バレーの来年の収穫予想とか、今年の天候がワインの味わいにどう影響したか、とか。
最初は英語の勉強になるかな、と思ってみたりもしたのだが、とにかく圧倒的に「単語(特に、色や香り、味を表す形容詞)」がわからないし、もしこの単語を覚えたところで、ワインを語る以外に使い道がないような言葉ばかり。
「芳醇な」なんて、広告で見ることはあっても自分から進んで使う機会が人生で何回あるか考えてみればわかるだろう。さっさとtune-outしてしまった。

だいたいお酒というのは、どんな料理に合わせるのか、バーで楽しむのか、レストランで頼むのか、家で飲むのか、そして誰と飲むのかによって「選択の適切さ」が変わるものだ。ソムリエは状況が限定されているが、評論家は広い範囲の「選択の適切さ」についてコメントしなければならない。パーカーさんのような大物になれば、軽々しい一言が業界全体に絶大な影響力を及ぼすのだから、ワインに関しては、ありとあらゆる言葉を尽くして自分の「評価」を伝えようとするのだ。例えば、こんな風に。

「ワオ!メドックのカベルネのようで、プルーン、イチジク、カシスやブルーベリーの香りもする。(略)、こんなにおいしいワインがこの価格で買えるなんて!年に6000本ものワインを試飲するが、これほどコストに優れていない。絶対にケース買いすべきだ!!!」


そしてこのコメントがいろいろな場所で引用されてワインの宣伝に使われ、このワインがバカ売れすることになる。
いや別に、パーカーコメントにけちがつけたいのではない。確かにおいしいワインだったし、この値段でこの味わいというコストパフォーマンスは評価に値する。ただ、コメントを日本語に直訳した時感じる違和感はいかんともしがたいと言いたいのだ。
これは日本語と英語の違いというより「ワイン語」が「日本語」になじまないからではないか。先に上げたワイン番組でも、あるいは有名なワイン雑誌(英語)でも、何だか特殊な言葉遣いを駆使してワインを語る「作法」があり、この「作法」をよく知らない人は入っちゃいけない空間を形成している。
この空間に参入したいと一生懸命作法を覚える人と、そういうのはちょっと・・・と感じる人とで、「ワイン好き」と「ワインマニア」って分かれるんだと思う。

私はただの「ワイン好き」で十分です。

洗練され尽くした言葉を駆使してワインを語れるパーカーさん、実は、ワイン以外の酒を語ることができない。この事実を知ったのは、一昨年日本酒のイベントに行って、日本酒の品評会のゲストとして呼ばれた彼が、石川酒造「多摩自慢」を評価したコメントを読んだ時だ。2つの日本酒の評価が書かれていたのだけれど、日本酒として「おいしい」と感じる基準が逆で、表現もつたなく、さらに「どちらもおいしいとは思うが、日本酒をよく知らないのでよくわからない」とあった。

そりゃそうだ。正直な人だな、と好感を持った。

日本酒のことを聞かれても、日本人がどんな好みで、どんなシチュエーションでこのお酒を飲むのかよく知らないから「わからない」。極めて適切なコメントだ。同じ「酒」という分野だからわかるだろうと思っている人を前に、「わからない」とはっきりコメントできる専門家は、本当に「専門家」なのである。だから私は、パーカーポイントはワイン購入の参考にする。日本人某有名ソムリエのコメントは参考にしないけれども。

実はこのイベント、友人Tと一緒に行っていたのだが、T曰く「私はワインのことは全くわからないし、このパーカーという人がどんな大物かも知らないけど、少なくとも日本酒に関しては、私の方がわかってると思う。」

当たり前だっつーの。
Tに対しては、次の名言を捧げたい。
「本当の酒飲みに、本当の酒の味はわからない。by 河上徹太郎」

記事が気に入ったらここをクリック!
by fishmind | 2007-03-02 21:22 | お酒の話