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魚心あれば水心

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魚心あれば水心あり:魚と水は互いに相手を欠くことのできない密接な間柄であることに例え、相手が好意を持てばこちらもそれに応ずる用意があることにいう(広辞苑)

サザエさんの町

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TITLE:今日も一緒にサザエさん-アニメサザエさん展-
DATE:2006年7月15日(土)〜9月3日(日)
AT:長谷川町子美術館
TIME:午前10時〜午後6時
FEE:¥600(大高生¥500、小中生¥400)

友人Tは、桜新町に住んでいる。

世田谷区民が桜新町と聞けば、まず真っ先に思いつくのは「サザエさん」と言ってしまってよいと思う。実は桜新町は他にも「桜並木」「給水塔」「やくみつる」「水前寺清子」などの名物(と言うのか?友人T)があるそうなのだが、ダントツの全国区知名度は「サザエさん」だ。



友人Tの熊本の姪(子ども)が上京した際、町中にあふれるサザエさんに感銘を受け、その後ずっと「おばちゃまはサザエさんの町に住んでいるのよね。」とうらやましがられているそうであるが、私も地方の田舎町出身なので、その姪の気持ちはなんとなく理解できる。(全くの余談だが、精神科医の友人Yは川崎市水沢に住んでおり「科学特捜隊の基地がある町」だと自慢しているが、秘密基地であるためか、町おこしに利用されている様子はない。残念なことだ。)

漫画「サザエさん」の原作者長谷川町子は上京してから亡くなるまで、ずっと桜新町に住んでいた。現在は彼女が生前作った「長谷川町子美術館」(運営は財団法人)が観光名所になっていて、美術館に向かう道は「サザエさん通り」と呼ばれ、商店街のBGMはサザエさん(アニメ)の音楽だし、本物の不動産屋の看板に「あさひが丘分譲中!」と書いてあるし、商店街の看板はもちろん、ありとあらゆるところに「サザエさん」が貼ってある。

この「長谷川町子美術館」に、先日初めて行った。
友人Tが、美術館だけでなく、いくつかの「桜新町の名所」を紹介してくれたのだ。
長谷川町子美術館は、今回は夏休み中で「お台場冒険王」とのタイアップイベントが行われていたが、普段は長谷川町子が集めた美術品を展示している。
長谷川町子は、美術品収蔵が趣味だったのだが、ある時「美術品は、自分だけが楽しむのではなく、大勢の人に見てもらう方が価値があるのでは」と思い立って美術館を作った、というエピソードが、微笑ましい漫画でパンフレットに紹介されていた。

こう見えても(どう見えるんだ)私は「サザエさん」には詳しい。私が最初に親しんだ漫画の数々は漫画好きの父のもので、我が家には長谷川町子の「サザエさん」「エプロンおばさん」「いじわるばあさん」などの一連の作品は全巻揃っていて、小さいときに何度も読んでいるからだ。今回、展示されている漫画をあれこれ読むことができたので、とても懐かしく、楽しかった。
アニメのサザエさんはいただけないが(あまりにも今どきの価値観を反映しない古くささに辟易させられる)、漫画はかけねなしの名作である。
もし、アニメしか知らないで漫画を読んだことがない人は、ぜひ読んでみてほしい。アニメのように「大家族主義」や「家意識」「男女の役割分担」を強調する価値観ではなく、それとは全く逆の方向から、社会の変化と人々のくらしにコミカルな視点をあてているから。

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さて、この美術館、展示以外に有名な目玉商品がある。
漫画のサザエさんは「世田谷区新町(現在の桜新町)」に住んでいるが、アニメのサザエさんは「あさひが丘」という町に住んでいる。このあさひが丘の模型があり、希望すればその模型の中に自分の家が建てられるのだ。
この企画は以前から話には聞いていたのだが、今回入館して実際に家を建ててきたので、そのシステムを紹介したい。

このアトラクションは入場料に含まれており、無料。

b0010426_922248.jpg美術館の1階に「花沢不動産(アニメのサザエさんに出てくる不動産屋)」の窓口があるので、そこで「家を建てたい」というと、チケットの半券にスタンプを押して家をくれる。この家は木片を白く塗ったもので、大きさは揃っているが形は少し変化がある。

備え付けのペンで色を塗ったり絵を描いたりして自分の家を作ったら、もう一度不動産屋の窓口に行って、分譲地のくじ(権利証になっている)を引く。
引いた住所地の、空いている好きな場所に、自分の家をボンドで貼ってもらうのだが、不動産屋も、分譲地に案内してくれるお姉さんもちゃんと演技してくれるので、ごっこ遊びをしているようでとても楽しかった。

b0010426_924849.jpgちなみに私は、あさひが丘7丁目7番地(第三分譲地)があたった。友人Tは同じ7丁目11番地。Tの家は駅に近く、「こちらは大変便利な場所でございます」と言われてご機嫌だった。本物のTの家は桜新町駅から徒歩10分以上かかるのだ。(友人Tの家。奥のグレーの建物が駅。)

分譲地の中心に、サザエさんの家が建っているが、かなりな大邸宅である。
美術館には、アニメのサザエさんの家の模型も作ってあるが、家はともかく(といってもこちらも広いが)庭がとてつもなく広い。
裏庭でキャッチボールができる(カツオがよく遊んでいる)庭だからこのくらいの広さはあると思うのだが、桜新町でこれだけの家の持ち主は、間違いなく大金持ちだ。(水前寺清子邸並み。)
分譲アトラクション、回転する家の模型、古いアニメーションが見られるコーナー、「長谷川町子の仕事場(これはちゃちかった)」は、常設展示である。

この美術館のもう一つの目玉は売店だ。非常に小さいスペースなのだが、休館日も開いているそうで、人気の高さが伺える。風呂敷、塗り絵、サザエさん人形焼きなどがおいてあり、私は何も買わなかったが、塗り絵(200円。ものすごく精密。)と風呂敷(600円)はお値打ちだと思った。

売店では、サザエさんをはじめ、長谷川町子の漫画も買える。私は「サザエさん」よりも「いじわるばあさん」の方がよくできている(し短い。)と思うので、もし長谷川町子初心者なら、こちらからお読みになるといいだろう。

「いじわるばあさん」のいじわるには「いのちにかかわるようないたずら」が結構多く、今なら「子どもがまねしたらどうする」と非難されてもおかしくない内容である。

長谷川町子は小さいときに父を失い、姉と二人で漫画(姉はさし絵)を書いて一家を支えてきた。母子家庭への社会の風当たりの強さが身にしみていたから、男性中心社会への強烈な批判意識を持っていたが、「サザエさん」ではそれを表現しきれずストレスがたまって、「いじわるばあさん」を描いたと言われている。(長谷川町子自身が、いじわるばあさんと自分の類似性についてコメントしている)
「いじわるばあさん」は一時はアニメやドラマ化されたが、そのいじわるぶりの本質を書くにはテレビというメディアはそぐわなかったらしく、サザエさんほどは知られていない。そしてアニメの「サザエさん」は、長谷川町子が表現したかったものとは全く違ったものに加工され、フジテレビによって広く配信されている。
作品が、作者の意図や精神を超えて普及することはよくあるし、作品を作る以上それは織り込まなければならないリスクではあるとは思っているが、ここまで逆の利用をされてしまうと、商業主義による搾取ではないかと思えてしまう。

とここまで書いたところで「ひょっとして」とウィキペディアを引いてみたら、漫画「サザエさん」の詳しい解説や、アニメと漫画の比較が載っていた。アニメのサザエさんに「くだらない」とか「不愉快」を感じる人は、ぜひ記事をチェックしてみてほしい。

私は、漫画「サザエさん」のファンだが、アニメの「サザエさん」は不愉快になることが多く、観ないようにしている。それでもたまに観てしまうことがあるが、年々「不愉快感」の度合いがあがるように感じるのは、「サザエさん」が、社会に大家族主義を啓発するアニメ番組という位置づけを深めているせいなのか、私のひねくれ方が(いじわるばあさんを生み出した長谷川町子のように)年々増しているせいなのか、判断できないでいる。

b0010426_9253930.jpg同じように感じている方がいたら、コメントがもらえるとうれしい。

そしてこれが、サザエさんの町に建つ我が家である。できるだけ目立つように、黒い壁に白い屋根の家にしてみた。もし美術館に行くことがあれば探してみてください。あさひが丘第三分譲地のかなり端っこです。

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by fishmind | 2006-08-30 09:28 | イベント紹介