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魚心あれば水心

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魚心あれば水心あり:魚と水は互いに相手を欠くことのできない密接な間柄であることに例え、相手が好意を持てばこちらもそれに応ずる用意があることにいう(広辞苑)

文化の差

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TITLE:ドレスデン国立美術館展〜世界の鏡〜
DATE:2005年6月28日(火)〜9月19日(月)
TIME:9:30〜17:30(金〜20:00)
AT:国立西洋美術館(上野)
FEE:¥1400(下記特設サイト内に割引券があります)
http://www.dresden-ex.jp/



明日まで、上野にドレスデンが来ている。

展示の目玉がまだ見たことがないフェルメールなので、2002年にプラドに行って以来約3年ぶりに国立西洋美術館に出かけた。やむを得ない。



狭くて混んでるから嫌い、とは以前も書いた。
ナショナルミュージアムというにはあまりにも小さく、狭く、どうにもならないほど物理的に貧弱なのを「コルビジェのデザイン」で乗り越えようとしてもダメだと思う。(収蔵品が個人のコレクションにおんぶにだっこなのもだらしがない。)
企画展は新館で行われているが、土地がない上に高さがとれない事情があるんだろう。狭くて引きがないのは変わらない。

だからいつも、お目当ての作品を観たらできるだけさっと退場するようにしているのだが、今回は時間をかけてしまった。
かなり見応えのある内容なのだ。
プラドと同じように絵画展なのだろうと、ポスターから勝手に思っていたのだが、絵画展ではなく「ドレスデン王室展示会」。久しぶりに「おなかいっぱいな満足感」があった。
行きそびれている人がいたら、今日も含めて二日しかないが、出かけてみて損はないとおすすめする。(死ぬほど混んでると思うけどね)

特に展示のトップを飾っている、王侯貴族たちが使った「学問のための道具」、地球儀や各種観測機器、狩猟や戦いに用いた武具や生活用品などの展示がすぐれもの。アートとサイエンスが特権階級の教養で、まだお互いの関係が今のように悪くなかった、古き良き時代を忍ぶことができる。
「世界史の授業みたい」とつぶやいていた若い子がいたが、イスラム文明の影響を受けた武具や、イタリアやフランス王室との交流により生まれた贅沢品の数々、中国や日本からの技術や意匠により発達した工芸品など、まさに西欧史をなぞるようにそろえられた展示品は、当時のドレスデンが第一級の豊かさを誇った都市だったことをよく教えてくれる。

これだけの街が戦争による破壊を尽くされたという事実には、ため息しか出ない。

しかし中身が良ければ良いほど気になるのが、パッケージの貧弱さだ。
今回は地球儀だの衣装だの武具だの家具だの、ガラスケースに入ったかさばる展示が多い上に、目玉の一つ、巨大ダイアモンドをあしらった装身具一式(写真。ものすごかった。)には警備員まで付いているから、ただでさえ狭い展示室が大変なことになっている。
もう一つの目玉のフェルメールなど、展示室と展示室の間の「何でこんなところに」と思える通路際に置かれており、混雑してきたら絵の前で人が堰き止められて、鑑賞どころの騒ぎではなくなることが間違いないと思われた。
平日だったからまだ多少ゆっくり眺められたが、休日だったらと思うとぞっとする。

良い博物館に出かける楽しみは、展示物が作られ、使われていた時代に想像力を働かせ、歴史のダイナミズムを追体験する時間を過ごせるところにある。規模の大小はともかく、内容に見合った豊かさをもった器として機能していなければ、良い「Museum」とは言えない。
多様性を盛る器としての豊かさが絶対的に欠如している国立西洋美術館でドレスデンの収蔵品を眺めていると、自国の文化の薄さばかりが透けて見えて情けなくなる。

ドレスデン国立美術館は戦争で跡形もなく破壊されたが、長い時間をかけて修復を進め、ようやく最後の修復がここ何年かで行われるということだ。
この展覧会は、今年が「日本におけるドイツ年」で「万博」も来ており、美術館の修復作業も最後の段階ということで「日本の皆さん、ぜひこのすばらしいドレスデンに来てください!!」というプロモーション企画だが、これだけのものを見せていただけると「これってほんの一部ってことなんだろうなあ、ちゃんとした博物館で見てみたいなあ、行きたいなあ、ドレスデン」という気持ちがふつふつとわいてくる。

ドイツ観光局、圧勝。

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by fishmind | 2005-09-18 10:00 | 文化と芸術の話