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魚心あれば水心

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魚心あれば水心あり:魚と水は互いに相手を欠くことのできない密接な間柄であることに例え、相手が好意を持てばこちらもそれに応ずる用意があることにいう(広辞苑)

Web写真展:卯月の二十日間

Web写真展:卯月の二十日間_b0010426_14251832.jpg
写真雑誌「Photo Japan」に掲載された作品コラージュ
TITLE:あっぷる写真展「にじゅう」
DATE:2011年4月147日(木)〜4月20日(水)
TIME:10:00~18:00
BY:写真集団あっぷる
AT:ギャラリーシリウス
Admission Free

2011年の3月に、何をしていましたか?

昔、英語の先生から「すべてのアメリカ人は、ケネディが暗殺された日にどこで何をしていたか言える」という話を聞いた。後日、カリフォルニア出身の友人に「そんなことはない」と正されたが、あるイベントがいかに社会に大きな影響を与えたかを、うまく表現する言い回しではないかと思う。この言い方に倣うと、「すべての日本人(その時に物心がついていた)は、2011年3月11日に何をしていたか言える」のではないだろうか。今も、おそらく30年後も。

あの大災害が起きた時、私はそんな風に考えた。

ところが1年が過ぎた今、3月11日のあの瞬間に何をしていたかはみんな言えるが、その前後の日常生活がどんなふうに動いていたかは、あまりよく覚えていない、ということがわかった。何人かの友人知人に「当時の日々の暮らし」を尋ねた結果、「大変だった」のは覚えていても、生活がどんなふうに動いていたかは、だいたいみんなはっきり言えない。
当時の日常の記憶が、まるでニュース映像に上書きされてしまったかのように薄れているのだ。

だけど、私は覚えている。
私が撮った写真たちが、私の記憶を、マスコミによる上書きから守ってくれたのだと思う。




2011年2月19日、3年間取り組んできた私の学位論文が最終審査に通ったという連絡を受けた。

学位論文とは別に研究費を取って進めてきた調査と、論文が通ったら出すと言っていた写真展の作品制作を同時に進めていた私は、ホッとする間もなく、インタビューと作品制作に明け暮れなければならなかった。

毎年参加してきた写真展は、研究のために2年間休んでいた。大学院が終わったら参加しますと言ってはみたが、2月以降でないと制作に取り掛かれないことは、最初から分かっていた。
今回のテーマは「にじゅう」。20回目の展覧会ということで、数の「20」でも「二重」でもいいので、「にじゅう」をテーマに作品を作るのである。こういう枠が決められた中での作品制作は、それはそれで面白いのだけれど、出展者間で作品意図がかぶらないように、事前に撮影計画を出さなければならない。作品展は4月末。制作に使える時間は多くない。
限られた時間内に最低限の納得を引き出すという逆算的思考から考えついた企画が、20日間毎日20枚の写真を撮って並べて展示する「日録」にしよう、というものだった。日録とは写真の日記である。
二十に二十を重ねるからテーマにバッチリ合うし、1枚1枚の写真がたいしたことなくても、400枚の写真を並べるだけでかなり見ごたえがある作品が作れるはずだ。時間も予算も余裕も無い中でも、それなりの作品が作れそうである。

タイトルはすぐに浮かんだ。「卯月の二十日間」。
3月1日から、3月20日までの20日間、毎日20枚の写真を撮って並べる。ょうど調査インタビューであちこち出かけなければならず、大学院の学位授与式(3月15日)や、ゼミ仲間との卒業旅行(3月12日)もあって、あちこち旅行する予定が立っていた。梅が咲き、水仙が咲き、道端の沈丁花が花開いていく、1週間でも風景の変化が大きい時期でもある。
たった20日間でもいろんな変化が撮れそうだ。
企画は「そういうのがあってもいいんじゃない」とあっさり承認された。

つまり、2011年のちょうど今頃、私は、毎日自分の日常生活を1日20枚以上20日間連続して撮影しなければならないというタスクを自分に科していたのだ。

まさか、その制作の折り返し点で、あの大災害が起こるとは。
結果的に私は、2011年3月11日の前後10日間の東京での暮らしのドキュメンタリーを撮る事になってしまったのである。


実際の展覧会は、計画停電と節電のために、ギャラリーの開館時間は変更、放射能と自粛のために、多くの人は外出や娯楽を取りやめていた4月半ばに開催された。あのどさくさの中で、十分な告知もできずに写真展を開催したために、作品を多くの人に見てもらえなかったことと、1年後の今、あの時、身の回りで何が起こっていたかを、ニュース報道ではない視点から振り返って、忘れていた記憶を引っ張り出してもらえたらと思い、ウェブ上に全作品を紹介することにしたのが、このブログ史上発の写真連載「卯月の二十日間」である。

明日から毎日、1年前の写真記録をこのブログにアップしていく。
写真展では1日当たり20枚、計400枚展示したが、肖像権の侵害などでウェブに載せられない写真もあるので、そのような写真ははずし、見てもらえるものだけをアップしている。日によって写真の数が違うのは、そのためである。
ただ、3月11日後の写真は、当時の状況がある程度分かるものについては、個人が特定されるような写真でも掲載させていただいている。写真の主には確認をとっているが、問題があると感じられた方は、ブログコメントにてご連絡ください。

では明日からの連載を、どうぞお楽しみに。

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by fishmind | 2012-02-29 14:56 | イベント紹介

by AYUHA